シリコンバレー上位2%のエンジニアを採用。世界的企業を目指すVPoEが語る、開発組織の作り方
「もう少しで、世界を目指すエンジニアリングチームが築ける」
そう語るのは、oViceのVP of Engineering(開発部門の最高マネジメント責任者)、Darwin D. Wu (ダーウィン)です。
シリコンバレーでエンジニアとしての腕を認められた彼は、生きている内に叶えたいことの一つ、「日本初のグローバルで認められるソフトウェア会社を作る」を実現するためoViceへ入社。
戦略策定、開発のリード、採用、マネジメントと幅広い役割をこなしています。
oVice入社後、ダーウィンはどのように世界を目指すエンジニア組織を作ってきたのか。彼の仕事観と組織作りの哲学を聞いてみました。
Darwin D. Wu (ダーウィン) 大学で政治経済と語学を専攻し、卒業後はシリコンバレーのテック企業にエンジニアとして従事。スタートアップ企業から、数千人規模の上場企業で働き、テックリードも経験している。2021年9月に正式にoViceへジョインし、現在はVP of Engineeringとして、開発チームのマネジメントやエンジニア採用を担う。
ー前職までの経歴を教えてください。
2015年に大学を卒業後、シリコンバレーで働き始めました。大小様々な企業に関わることで、ソフトウェア会社のライフサイクルを学ぼうと考え、平均1年半ごとに転職を繰り返していました。これまで所属したのは、上場企業、アーリーステージのスタートアップ企業、ミドルステージのスタートアップ企業、大企業の「Cloudflare」です。
仕事は、2社目からテックリードを担当。Cloudflareに転職した経緯は、2社目と3社目の企業で、入社後8ヶ月で業務の大半、かつ問題が起きた際のシステム修復を自動化できてしまったから。もっとやりがいがあり長続きする仕事をしようと思ったんです。
Cloudflareでは、チームメイトと2人でチーム作りを経験しました。エンジニアだけでなくマネージャーも自ら採用して、最終的には8名のチームに。大きめの仕事でいうと、サーバーにどのソフトウェアを走らせるか決める「マッピング」社内の根幹サービスが老朽化していたので、それを作り直すプロジェクトのリードを担当。Cloudflareでの2年間は、飽きることなく楽しく働けました。
ー順調に経験とキャリアを積まれていたにもかかわらず、なぜoViceに転職したんですか?
きっかけは、大学時代から知り合いだったHR責任者の宮代(宮代隼弥)に誘われたことです。当時、コロナ禍で通勤時間がなくなり、空いた時間でいくつかの日本企業にアドバイザーとして関わり始めていました。その噂を宮代が聞きつけたのか「エンジニアの採用を手伝って欲しい」と、相談してきたんです。
ーoViceの最初の印象はいかがでしたか?
ロックダウン以降、人とのオーガニックな会話や関係性が消え去りました。個人的にはオフィスで働くことは好きではないですが、何気ない会話からアイディアが生まれたり、リスクのある施策を事前に聞きつけストップをかけられるといった、空間を共有しているからこそのメリットに気づいて。
oViceを使って現実空間とリモートの統合ができれば、そうしたコミュニケーション課題を解決できると思いました。
ただ、会社に対しては「こんな散らかっている会社、絶対入らんとこ」って思っていましたよ(笑)。創業まもないので当たり前ですが、快適に仕事ができる環境と会社の方向性は当時には見えなかった。それに、Cloudflareを辞めるつもりもなかったので、「アドバイザーとしてなら関わってもいいかな」くらいの気持ちでした。
ーどのように気持ちが変わっていったのですか?
2021年6月頃に「シリーズAで18億円の資金調達」の話を聞いたのが転機になりました。日本でそんな額を調達できる企業は珍しく、ちゃんと市場価値を評価されている会社だということがわかって。そこから興味を持って売上や財務情報について経営陣に質問してみると、欲しい情報は包み隠さず共有してくれました。「透明性の高い会社だ」と、好印象でしたね。
宮代からもずっとクロージングを受けていたので、そろそろ決断しようと思って。経営陣の人柄を知るために、部門長全員+当時のリード投資家の浅田さん(浅田慎二さん)と1 on 1でじっくり話すことにしました。
ー人柄を重視されているんですね。
そうですね。役職が上になっていけば行くほど、求められる仕事の基準も高くなり、それぞれの意見やスタイルは強くなっていきます。お互い違う価値観を持っている前提を持って、「建設的な議論と衝突ができる人たちと働きたい」と思っていたんです。
話してみると、浅田さんは金融出身の投資家としては珍しく、数字が全てという人ではないことがわかりました。彼自身がプロダクトを作っていることもあり、その過程の複雑さも理解してくれます。投資家とプロダクトの作り手としての、良い関係性が気付けるイメージが湧いたんです。
ー「oViceの将来性」と「ボードメンバーの人柄」が決め手になった、と。ダーウィンさん自身が、oViceで実現したいことはありますか?
一つは、日本発の世界的なソフトウェア会社を作ることです。日本で有名な「楽天」も、海外では「名前は知ってるよ」と言われる程度。決済プラットフォームの「Stripe」のように、会社をやっている人なら誰もが知っているテック企業を作りたいと思っています。
もう一つは、自分自身の開発方法やチーム作りで、素晴らしいプロダクトが作れることを証明することです。シリコンバレーのいろんなチームで働いてきたので、僕なりの考えが蓄積されてきました。それを思う存分試したいと思っています。
(2021年 oVice fesにて)
2021年9月に入社してから、まずはエンジニアに「やるべきこと」と「やらないべきこと」を理解してもらうために、ガイドラインを作りました。さらに、エンジニア採用を積極的に行い、ジュニアレベルとミドルとシニアレベルのエンジニアがバランス良く所属するよう意識しながら、7名から17名までメンバーを増やしました。
ー特に印象的だった採用の事例はありますか?
10月に、アメリカの上場間際の企業で「プリンシパルエンジニア」として働いていた、元同僚のアルバートを採用できたことですね。彼の技術と知識量は、僕と同等かそれ以上。彼がエンジニアリングやアーキテクチャ、メンバーのメンタリングを担当してくれたことで、僕はマネジメントの仕事に集中できるようになりました。
彼の加入は、散らかっていたチームの状態をひっくり返し、「世界を目指せるエンジニアリングチーム」を築くきっかけになったんです。
ー組織をガラッと変えるほどの人を採用できた、と。そのほか、組織づくりで大切にされていることを教えてください。
当たり前のように聞こえますが、「コミュニケーション」を最も重要視しています。海外で急成長する企業は、エンジニアがかなりアクティブにコミュニケーションをとる。優れたエンジニアでも、1人で全部ができるわけではないですし、結局は、チームでものづくりをしているので、意思疎通を徹底するんです。
また、良いコミュニケーションの土台となる、信頼関係の醸成も意識しています。
-何か工夫されていることはありますか?
僕はどんな意見でも積極的に発言して欲しいと思っていますが、人格やパーソナルなことへの否定は一切禁止にしている。そうした発言は簡単に信頼関係を崩してしまう。一度関係が崩れると、発言に“他意”が入っていると思われてしまうようになり、健全な議論ができなくなるので注意しているんです。
また、全員と隔週で「1 on 1」を実施して、不満に感じていることや、より良い仕事をするためのアイディアを聞くようにしています。それを繰り返していくと、組織課題のパターンが見えてくるので、あとは課題解決に取り組むだけ。
全ての問題は「コミュニケーションに始まり、コミュニケーションに終わる」。だからこそ、コミュニケーションの最適化に、相当のリソースを割いています。
(Heavenly Mountainにて)
ー採用活動においても、コミュニケーションの項目は意識されているんですか?
そうですね。僕らは候補者を判断する上で「Things we screen for(判断基準となる項目)」と「Things we don’t screen for(判断基準とならない項目)」を分けて、詳細に記載しています。「コミュニケーション」は、「Things we screen for」の重要項目です。これは実はMediumの採用基準をかなり参考にしています。ほとんどパクっていると言っても良いぐらい。笑
それだけシリコンバレーでエンジニアの採用基準というものがかなり標準化されてきているとも言えます。
(「Things we screen for(判断基準となる項目)」/「Things we don’t screen for(判断基準とならない項目)」)
-よく企業の採用基準でみる「カルチャーフィット」が「Things we don’t screen for」に入っているのは面白いですね。
カルチャーフィットは、組織の同質性を高め——モノカルチャー化させ——新しい視点を獲得しづらくする要素にもなり得ると考えているからです。
価値観やバックグランドが違うもの同士お互いを尊重しながら協働する方が、より多様なユーザーのニーズに応えられる組織になります。そうした組織を目指す上でも、やはりコミュニケーションは鍵になると考えています。
ー同質性を高めるコミュニケーションではなく、多様性を発揮するためのコミュニケーションなんですね。組織作りのこだわりを理解できました。では、今後のプロダクトと開発組織の展望はどうお考えですか?
現在直近で取り組んでいるのは、Elixirでのシステム書き直しです。代表のジョンが掲げている「エコシステム構想」とは、プロダクトのプラットフォーム化と同意。ユーザーの欲しい機能を全て満たすのではなく、コアな機能の品質を保ちつつ、好きにカスタマイズできる拡張性を担保させる構想です。その実現のために、技術負債を今のうちに返済しておかないと実現がかなり困難です。
並行して、oViceのUIも刷新しています。これも、ユーザーの使いやすさとカスタマイズの利便性を高めるためです。両方とも3、4月頃を目処に公開する予定で進捗は順調です。
また、組織の話では、僕が首を突っ込まずとも自走できる体制を作りたいと思っています。今後、自分自身は世界展開を推し進める長期的な戦略にフォーカスしていきたい。実際、2021年1月からは、ヨーロッパやアメリカでシェア拡大するために必要なものをアナライズし、チームに共有したり、PMチームと共に施策の優先度付けを行っています。
-チームの体制が整い、本格的な世界展開やプロダクトの拡張を目指すフェーズに入ったんですね。
そうですね。エンジニアにとって、oViceは相当良い環境のはず。グローバルチームでさまざまな価値観に触れながら、自分の狭い世界から抜け出す機会になる。さらに、世界的企業を目指すチームに初期段階から関われるのは、大きなメリットじゃないでしょうか。
また、僕とアルバートは、シリコンバレーでスタッフレベル以上のエンジニアを経験しています。特に彼はGoogleやAmazonでも働いていた、世界でもトップ2%に入る技術者。事業をスケールする方法やベストプラクティスを近くで学びたい方や、スタッフエンジニア・プリンシパルエンジニアへのキャリアを築きたい方は、良い経験が積めると思います。
(取材・文/佐藤 編集/森園)
フルリモートの良いところは、どこでいつ仕事しようが成果を出せば文句を言われないところ。チームのエンジニアも、仕事の合間にドラマを見て休憩するなど、好きに働いています。ただ、仕事の量は多いので、メンバーがオーバーワークにならないやり方を模索する必要があります。
その一つの手段が、徹底的なドキュメント化です。
グローバル組織では、自分が寝てる間に他の人が起きているのは当たり前。打ち合わせのような「同期的」なコミュニケーションだけでは、どちらかが無理な時間帯に働くことを強制されてしまう。
「同じ時間帯に働いている」という先入観を排除して、「非同期的」な働き方にシフトするため、仕事の指示も記録もドキュメント内に残る形にしています。いつ誰が見ても仕事が進められるように、アクセスしやすく見やすい情報整理を心掛けています。
採用候補者の方との面接で、まとまったドキュメントを見せた際に、「こんなにちゃんとしたNotion初めて見た!」と言ってもらえるのが、ちょっとした自慢です。
もしこの記事を読んでる方でドキュメント文化を参考にしたいのであれば、Gitlabのremote handbookをオススメします。
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